令和五年10月24日

JR東日本ブースを出たSは、NEDOブースに入った。ここは、先ほどのJR東日本ブースよりよほど広かった。

ブースの中は、次世代DX、ポスト5G、スマートIoTの3エリアに分かれていた。

技術方面の仕事をしていると思しき男性来場者たちがたくさんブースにいて、熱心にアテンドの人と話をしたり、展示パネルを読んだりしていた。

Sは、空飛ぶクルマという文字を、ブースの中に掛けられている説明パネルの中から見つけた。

空飛ぶクルマとはどういうものか、まったく想像つかなかったが、面白そうだなと思った。

「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」という、技術のことには明るくないSにとっては、何のことかまったく分からない事業を説明するコーナーで紹介されていた。

Sは早速、空飛ぶクルマとは何かとアテンドしている男性に聞いた。

男性は40代半ばだった。表情は豊かで、話し方は相手が分かりやすいよう気配りが感じられ、それでいて自分の主張はしっかり伝えようという姿勢がうかがわれた。営業職のような雰囲気の人であった。

話を聞くと、どうもヘリコプターのようなものらしい。ヘリコプターはプロペラがひとつだが、空飛ぶクルマはいくつものプロペラをつけているのだそうだ。

「クルマ」と呼ばれてはいるが、地上をタイヤで走ることはないという。

今度の大阪万博でデモ飛行を行う計画であると、ブースの男性は話した。

Sは不思議に思った。そういう乗り物ならば「クルマ」と呼ぶのは不適切ではないか。もっと別のネーミングがふさわしい。

少し考えて「そうか分かった」とひとりごちた。クルマメーカーが開発しているに違いない。もしかしたらトヨタだろう。だから空飛ぶ「クルマ」なのだ。

説明員の男性に、その旨質問した。答は意外なものだった。

「クルマメーカーとは全然関係ありません」

それならば、開発しているのはスタートアップ企業であろうとSは考えた。ロケット開発を行うスタートアップ企業もある。そういうことを知っていたSは、何となくスタートアップ企業が手掛けているのではないかと考えた。

説明員に質問すると、そうだと言う。トヨタを辞めた人が会社を起こして開発しているのだそうだ。

トヨタ本体ではなくて、トヨタを辞めた人が開発しているのは、なかなか面白い。

Sは、空飛ぶクルマについていろいろ話ができて、興味が湧いてきた。