妻が微笑みながら告げた。
「チューリップの蕾ができたわ。」
わたしたちは去年の暮、庭の花壇にチューリップの球根を植えた。
春先の季節、葉が地面から生え出して、成長しているのは知っていた。
まさか蕾がもうあるとは!
わたしは庭に出た。日差しは春の光というか、すでに初夏の趣である。思わず、目を細めた。
花壇に行き、腰をかがめた。
冬の間、土の下に眠っていた球根が、いま緑の葉を広げ、小さな蕾を抱いている。
わたしはじょうろで蕾を中心にチューリップ全体に水を与えた。
指先でそっと葉を撫でる。思いのほか固い。
20ほどのチュリーップの芽が出ているが、蕾はひとつだけだ。
わたしはふと妻の方を振り返る。妻は家の勝手口のそばに立ち、陽だまりの中に佇んでいた。
そよぐ風が気持ちよかった。
