春の彼岸が過ぎた。
日ごとに陽は長くなり、庭先の●●が白い花を誇らしげに咲かせた。
暖かな風が頬を撫で、シャツの襟元を緩めることが多くなった。
だが、今朝は違った。夜半より寒さが戻り、目を覚ますと、しばらく使っていなかったヒーターのスイッチを入れた。
寝室で軽く身支度を整え、1階に下りた。リビングの雨戸を開けると、空は今にも雨が落ちてきそうだ。
きょうはバンドのリハーサルを昼から行う予定になっていた。
リビングには常にテレキャスを1本、置いている。いつでも気が向いたら作曲できるようにそうしているのだ。
男はソファーに腰をおろし、ギターを手に取り、小型アンプのスイッチを入れた。
きょうリハで演奏する曲のイントロを弾いた。指は弦をなぞり、歪んだ音がアンプのスピーカーから出た。
早朝の雰囲気が充満しているリビングに、フェンダーのアンプから出るノイジーな音が響いた。
男は窓の外を見た。春の冷たい雨が降り始めた。