夕食をとったあと、ソファでコーヒーを飲みながらJR東日本の路線図を眺めていたSは、蘇我駅を活用した大回り乗車を思いついた。
Sが住んでいる船橋から総武線快速で千葉駅へ。内房線に乗り換えて蘇我駅へ行く。ここで京葉線に乗り換え南船橋まで行き、最後は武蔵野線で西船橋駅へ到着するというルートだ。
所要時間はざっと見積もったところ、どれも通勤路線であるので日中でもそれなりに本数はあるだろうから、2時間もかからないであろう。
そう考えたSは次の日、早速この大回り乗車を実行することにした。
翌日、気持ちのよい秋晴れの日であった。午前11時ごろ船橋駅を出発した。車窓は、晴れ渡った青空をバックに、住宅やビルが休みなく後ろへと流れていく。Sは見ているだけで気分爽快であった。
Sが乗った車両はE217-38であった。
津田沼を過ぎて千葉へ近づくと、前方の景色が見たくなり、先頭車両の一番前、運転手のすぐ後ろに移動した。
千葉駅は総武線快速と各駅、外房線、内房線の乗り換え駅で、10番線まである千葉県の巨大ターミナル駅だ。
駅に入る前、線路はカーブを描きながらいくつもに分岐し、横方向に広がっていくさまは壮観である。
千葉駅ではNewDaysで飲み物を買った。NewDaysはJRが運営するコンビニだ。Sは、運賃が安いのだか。できるだけJRが運営する店舗でお金を使ってあがようと出発する前に決めたのである。
ここで内房線に乗り換えた。待ち合わせ時間は15分ほどだった。乗った車両はE235-1023である。車内は真新しい感じが漂っている。
海側の車窓には、海岸にある工場群の高い煙突が数本そびえたっているのが見える。
間近に見たら、直径が何メートルもある巨大な煙突なのだろうが、はるか遠くから眺める煙突は、机の上に立てた鉛筆のようで、直立しているのが心細い。
蘇我駅まで乗った。ここで京葉線に乗り換えた。待ち合わせ時間は5分ほどと、とても接続がいい。
船橋駅を出るときは、蘇我駅で乗り換えは時間があくだろうから、駅の中を研究できると思っていたが、あてが外れた。
京葉線の車両はE233-5009だ。これまでは東に向かって進んできたが、ここ蘇我駅で折り返し、西に向かって進む。
海側を見ると、さきほど内房線から見えた工場群がより間近に見えた。
さらに進むと、倉庫が立ち並ぶ。京葉線沿線はこのあたりから都内まで、業種を問わず企業の物流施設が延々と連なる。
南船橋で降りた。ここで武蔵野線に乗り換える。武蔵野線は日中は本数が少ないので、待ち時間に駅構内にあるBecksコーヒーショップで一休みしようと電車に乗っているときから思っていたが、Becksは閉店していた。
BecksもJR関連の企業が運営している。Sは、安い運賃で乗らせてもらっているかわりに、ほかのものでJRグループの売り上げをあげようやろうと思ったのだ。
看板はまだ掛けられていたから、時期がくれば再開するのかもしれないが、閉店してから大分時間がたっているような雰囲気であった。
武蔵野線の電車に乗り込んだ。車両はE231-24である。最終目的地の西船橋駅はここからひと駅だ。
西船橋駅を出発した電車は、工場、倉庫、事務所ビルなどを下に見ながら、大きく右にカーブを描いて走る。
ほどなくして西船橋駅に着いた。改札を出て、西船橋駅の駅ビルにあるてんやで遅めのランチを取り、きょうの大回り乗車を終えた。
