令和五年11月25日 カンナンリハ

おれは都営新宿線の神保町駅を降りて、地上へ出た。

晩秋の冷やりとした空気が広がっていたが、この季節には珍しく陽の光がさしていたので、温かさを感じた。

靖国通りを駿河台下交差点のほうへ向かって歩きながら、路面にびっしりとつながる古本屋の店頭の本を急ぎ足で見た。

目的地のリハーサルスタジオは駿河台下交差点のすぐ近くにあった。

雑居ビルの6階から8階がスタジオだった。

歩道から2、3歩ビルに入ったところにエレベータが1台あった。

扉の横のボタンを押して、カゴがいま何回にあるのか表示を見たら8階にあった。エレベータは、なかなか来なかった。

ようやく来たエレベータには誰ものっていなかった。

おれはエレベータに乗り、スタジオの受付がある6階のボタンを押した。そのとき、若い大学生のような雰囲気の小柄な女の子がひとり乗って来た。

スタジオの階に着いて、エレベータの外に出た。

そこには機材や自動販売機が置いてあり、もともと狭いスペースがさらに狭くなっていた。

そこにいましがた練習を終えたばかりの大学生らしい男がふたり、エレベータを待っていた。

「このスマホ、6万円だよ」

「そうなんだ」

彼らの横を通り過ぎたときに、こんな会話が聞こえた。

ロビーにも練習を終えたばかりの大学生らしいバンドメンバーが6、7人いて、スタジオ代の清算やバンドで演奏する曲の話をしていた。

スタジオの近くには明治大学をはじめて、大学がいくつもある。このスタジオは近所の大学生に人気なのだろう。

ロビーにいたのは全員男だった。みんな大学生特有ののんきな顔つきをしていた。

おれは、自分も大学生のころは、こんな顔つきをして過ごしていたのだろうと、昔を思い返した。