船橋は団地のまちだ。
昭和の時代、経済が急成長した。
男たちは都心の会社に勤めた。
結婚した男たちは妻とともに、都心から少し離れたまちに住んだ。
船橋に団地が建設された。
夫が都心の会社に勤める家庭は団地に住んだ。
夫は毎朝、団地の近くの駅から鉄道で都心の会社に通勤した。
妻は団地で子どもを育てた。
子どもにとって、団地はふるさととなった。
写真家、北井一夫は船橋の団地の風景を撮影した。
フナバシストーリーというタイトルで、撮影した作品を発表した。
北井は満州に生まれ、東京と神戸で育った。
船橋と北井とは、生まれや育ちの地において接点がない。
そんな北井が船橋の団地を撮影テーマとしたのはどうしてだろうと不思議に思った。
カメラマンとしてのキャリアをスタートさせた北井は、村をテーマにした。
都会で育った北井は、田舎で見ること聞くことすべてが刺激的で感慨深いものだった。
北井は、古き良き日本の姿をフィルムに収めた。
1984年、北井は新聞で団地の特集記事を読んだ。
それが北井の写真活動の転機となった。
北井は団地をテーマに写真を撮った。
それまで北井が追いかけていた「村」や「伝統」は、長男の世界だった。
団地は地方から都会に出てきた次男、三男の世界であった。
北井の撮る団地の写真は魅力的だ。
それは長年村を撮影してきて、日本の古き良き伝統に接してきたことと無縁ではないだろう。
