午前10時、S住宅の営業担当者が我が家の呼び鈴を鳴らした。
営業担当者はA川という。
30代後半の身長は175センチくらい、やや肉のついたからだの通勤電車によく乗っていそうな男性だ。
A川氏は我が家の営業担当者ではなく、我が家の前がいま宅地化工事を行っていて、その物件の営業担当者である。
我が家の門の両脇には、道に沿って植栽がある。
ぼけやお茶などの背の低い木が植わっている。
A川氏は、道路を整備したいので、我が家の植栽を撤去させてくれというものだった。
A川氏は物腰柔らかな態度でそのことを私たちに伝えた。
わたしたちにとっても、道路はわたしたちの所有ではなく、これまでの経緯から道路わきに植栽したものであるので、撤去してくれと言われれば、それを断る理由はなかった。
しかも今回は、S住宅が撤去の費用を持つというである。
道路に植えられているのであるから、いずれは撤去しなくてはならない植栽である。
先方が撤去費用を負担してくれるというので、わたしたちは残念な気持ちがあるものの、同意した。
妻は、門の両脇にあるぼけと葉が赤い背の低い木だけはほかの場所に移したいので、掘り起こしてくれないかと頼んだら、A川氏はしょうがないなという表情を暗に示しながらも、すぐに了解してくれた。