令和五年11月14日 国会議員候補予定者

次回の総選挙で立憲民主党から出馬予定の水沼ひでゆき氏が、家に挨拶に来た。

三十三歳。若い。

小柄な人だ。

物腰が低い。

丁寧な口調だ。

表情が優しい。

線が細くて、か弱い印象だ。

水沼氏は早稲田大学を卒業して損保会社に就職した。

会社に勤めながら、政治運動に携わっていたのだろう。

国会議員に立候補することを決めた。

損保会社を辞めた。

その後、生活費を得るために、アルバイト的仕事をしているのかもしれない。

しかし、基本的には無職である。

そんな道を選んだのだから、芯は強いに違いない。

水沼氏は玄関先で、俺に自分の政治主張が書いてあるパンフレットを手渡した。

そのあと、「握手させてください」と言って、俺の右手を両手で包んだ。

その瞬間、顔を上げて、俺の顔をまっすぐに捉えて、目に力を入れて俺を見た。

睨んだのではない。

選挙に勝つ!という気持ちを込めて、俺を見た。

顔全体の表情を引き締めた。

それまでとは別人になった。

俺は、この人が立候補者になろうとしている理由が分かった気がした。