次回の総選挙で立憲民主党から出馬予定の水沼ひでゆき氏が、家に挨拶に来た。
三十三歳。若い。
小柄な人だ。
物腰が低い。
丁寧な口調だ。
表情が優しい。
線が細くて、か弱い印象だ。
水沼氏は早稲田大学を卒業して損保会社に就職した。
会社に勤めながら、政治運動に携わっていたのだろう。
国会議員に立候補することを決めた。
損保会社を辞めた。
その後、生活費を得るために、アルバイト的仕事をしているのかもしれない。
しかし、基本的には無職である。
そんな道を選んだのだから、芯は強いに違いない。
水沼氏は玄関先で、俺に自分の政治主張が書いてあるパンフレットを手渡した。
そのあと、「握手させてください」と言って、俺の右手を両手で包んだ。
その瞬間、顔を上げて、俺の顔をまっすぐに捉えて、目に力を入れて俺を見た。
睨んだのではない。
選挙に勝つ!という気持ちを込めて、俺を見た。
顔全体の表情を引き締めた。
それまでとは別人になった。
俺は、この人が立候補者になろうとしている理由が分かった気がした。
