吾輩は、自由気ままな猫である。
気ままではあるが、縄張りは一応決まっている。
このあたりは起伏に富んだ地形で坂道が多い。
吾輩の縄張りは坂道に面した家5軒と、その先にある梨畑、そして梨畑に面した4軒の家だ。
ここいらへんは近年住宅が建ったとことで、吾輩が縄張りにしている昔からの家の敷地は豪邸では全然ないが、近年の建売住宅に比べると、庭もそれなりにあり、相当広いと言っていいだろう。
だから吾輩の縄張りは結構広いのである。
吾輩はいわゆる野良猫である。野良猫には一般的に主人はいない。然るに吾輩にはご主人と呼べる人物がいる。坂道の一番上にの家に住んでいる人物がそうだ。
ようやく還暦になったところの男性で、自宅で仕事をしている。
何の仕事をしているか吾輩にはよく分らぬが、近年いろいろな事業に着手しはじめたらしい。
日曜日の昼下がり、この日は、先日来の寒さが収まり、日差しはないものの、気温がぬるんだ日であった。
近所に住むA氏が、ご主人の家の玄関チャイムを鳴らした。