令和五年10月17日

葛餅(くずもち)について書く。

以前、葛餅が有名な船橋屋の社長と話したことがある。

葛餅は発酵食品であること。
葛餅とはいうものの、原材料はじゃがいものでんぷんであって、それは創業以来変わっていないこと。
船橋屋の社長に就任して間もなくは、古くからいる職人さんや従業員さんとの意識にずれがあり、経営のかじ取りに苦労したこと、などを伺った。

それ以来、葛餅に関心が出た。

日曜のリハの帰り、北千住駅に向かう途中、商店街に伊勢屋という和菓子屋がある。
間口二間ほどの小さな店だ。前々から気になっていたので、家に買って帰ろうと思った。

ちなみに、和菓子屋の販売方法は、どこの会社も同じだ。

路面に間口一間か二間の商品ケースを置いて、お菓子を並べ、商品ケースを挟んで対面で販売する。

興味深い。和菓子屋世界の伝統なのだろう。ここ伊勢屋も同じだ。

いっしょに駅に向かって歩いていたドラマーが「ここの店、有名なんですか?」と言いながら、店の商品ケースを覗いた。

「僕も買って帰ろうかな。僕、葛餅が好きなんですよお」

色とりどりの和菓子がたくさん並んでいる、その一番はしに葛餅の折箱が置いてあった。

恐らくは、昭和時代と基本的にまったく変わらない、昔ながらの包装紙でくるまれた折箱である。折箱の風情に品がある。

俺は船橋屋の葛餅を思い出した。この店の葛餅と食べ比べてみようと思った。

家に帰って、黒蜜と黄な粉をたっぷりとかけて食べた。

船橋屋の葛餅はじゃがいもが原材料だが、こちらは小麦粉が原材料である。

葛餅は発酵食品なので、口に入れると、ほのかなくせのある風味がある。それが旨い。

食感。弾力があり、もちもちだ。

次は船橋屋の葛餅を買ってこようと思う。

「おくの細道」を読んでいる。

大変に読み甲斐のある作品だ。

例えば「黒髪山」についての記述。日光の男体山を「黒髪山」と呼ぶ。おれは恥ずかしながら、おくの細道を再読するまで知らなかった。

源頼政の歌「身の上に かからむことぞ 遠からぬ 黒髪山に 降れる白雪」。非常に有名だ。

芭蕉は「黒髪山は霞かかりて 雪いまだ白し」と書く。

頼政の和歌を思い浮かべる描写である。昔の歌人の世界と、いまの芭蕉の旅の世界が「歌枕」でつながっている。

こういうのがおれは好きである。ふたつの世界がつながる。ふたつの世界を行き来する。そして模倣でない、新しい世界を作る。音楽でもできるし、広く捉えれば人生でもできるであろう。